妖艶な石仏の話(奥会津)
どんな旅にときめきを感じるだろうか。
今回の旅の話は、福島県金山町で出会った絶世の美女の石仏の話をしよう。その石仏に私の心は一目で釘付けになった。
「この美女はなぜ石仏となって、ココに閉じ込められてしまったのか…」そんな気持ちにさせられるほど妖艶な石仏だった。
私はJR只見線の撮り鉄旅を計画していた。JR只見線は只見川沿いを走るローカル線。絶景の秘境ローカル線としてカメラマンに人気の鉄道だ。とくに奥会津の金山町はJR只見線でも絶景スポットとして人気が高い。
しかし、ローカル線の撮り鉄は待ち時間が長い(笑)。私は地図とにらめっこしながら金山町周辺の立ち寄りスポットを探していた。
「ん。これはなんだ!!((°д°))!!!」
只見川の、川の中に神社があるじゃないか。
Google マップを拡大してよく見てみる。只見川の中にある神社は伊夜彦神社というらしい。写真もない。口コミもない。金山町のサイト諸々を確認したが、伊夜彦神社のことは載っておらず、何もわからなかった。当然、Googleストリートビューでは、川の中に存在するこの神社は、表示されなかった。
石仏と出会うまで
待ちに待った撮り鉄旅の日がきた。初夏の金山町では、川霧が発生する。幻想的でとても美しい景色を見ることができるのだ。その日は前夜からの雨も止み、晴れ予想の朝。川霧に浮かぶ集落がとても美しく「この絶景は日本なのか!」と思うような朝の景色を見ることができた。
会津中川駅付近で電車1本目の撮影を終え、伊夜彦神社へ行こうと、いざ県道252号線を只見方面へ車を走らせる。絶景撮影成功の興奮にプラス、謎の地「伊夜彦神社」への期待もあり、私の心はテンションマックスに高ぶってる。
県道沿いに伊夜彦神社への標識を見つけた。そこを入っていくと、道が細くなり橋の手前に駐車場がある。橋の先には社殿が見えた。ここが伊夜彦神社か?…。車を止め周りをよく見渡すことにした。ここが伊夜彦神社に間違いないことをGoogle マップで確認しようにも電波が入らなかった。
川幅の広い只見川。お堀に囲まれた城でも建っているかのように、中洲に作られた石垣。なんとも面白い。そこに巨大木の林と社殿。橋を渡り近づいてみる。社殿は、そう古くはなく近代に建立したように思える。社殿正面には伊夜彦神社と書いてあった。
振り向くと伊夜彦神社の説明看板もある。もともとここには稲荷神社があり、伊夜彦神社は、昭和27年の本名ダム開発にともない移築されたそうだ。社殿から古めかしさが感じられないのは、そのためなのだろう。
奥に進むと杉林の木陰に祠や石仏が数体ほど祀られていた。私は誘われるように、その石仏たちに近づいて行く。社殿の裏側近い位置に一体だけ他の石仏とは、あきらかに異質の石仏が鎮座しているではないか。
気になって近づくと、私はその石仏に心を鷲摑みにされた。絶世の美女の石仏なのだ。琵琶を手にしているから弁財天様なのだろう。上半身は裸体で、下半身には薄い羽衣一枚をまとっている。
口元は顔彩で色付けされたのか、淡く紅もつけている。前日の雨滴が絶世の美女の裸体を湿らせていて、なんともイヤラシイ。しかも、うっすらと笑みを浮かべた目元と口元は、半開き。とても艶やかなエロスを感じる石仏なのだ。こんな妖艶な石仏があるのだろうか…。目を疑うほどだった。
仏都会津には、いろんな顔立ちの石仏がいらっしゃる。凛々しい方も、淡麗なお顔立ちな方も、不細工な愛嬌たっぷりの方も。しかしエロスを感じさせる絶世の美女の石仏には初めて出会った。
女性の私もドキドキしてしまうくらい美しい伊夜彦神社の石仏との出会いにかなり感動しつつ、2本目の電車撮影にむけて伊夜彦神社をあとにした。
金山町のパワースポット
帰宅して旅のまとめをする。伊夜彦神社はもともとは弥彦神社の分神で「八十里越街道を通って金山町から新潟県の弥彦神社に参拝に訪れていた信仰の名残で建立されたのではないか」という説を発見した。弥彦神社といえば縁結びの神様。だからだろうか。中州に渡る橋のたもとにハートの石があった。青空を水鏡にしたこのハート石もまた、美しい石だった。
旅は面白い。行く前も、行った先でも、行った後でも。面白い。私は山岳崇拝の名残だと思われる石仏が好き。先人たちの信仰心に思いをはせ、時間や空間をトリップした気分になれる旅は最高だと思う。
花子 2022.03.06
参考資料
ただみ・かねやまで撮る只見線撮影ガイド
https://www.town.kaneyama.fukushima.jp/uploaded/attachment/628.pdf
この記事は、花子(登販 夜勤専属)さん(Twitter:@a10hon51 )に執筆していただきました。Twitterから執筆依頼をしていただき、快く受け入れて頂き、この度このようにブログに掲載させていただく流れとなりました。
地図で見ると川の中にある神社、絶世の美女の石仏、ものすごく気になりますね。この記事からもわかる通り、花子さんの書く文章はとても読みやすいです。ご自身でもブログサイトを運営されており、主に福島県の会津地方の魅力がリアルに伝わってきます。こちらもあわせてご覧ください。(『歩きにすと』)
花子(登販 夜勤専属) さん、この度はご協力ありがとうございました。