大学の課題で会津の歴史に触れた。

歴史

ヤバい

ホチキス止めされた二枚の紙が配られ、めくった瞬間に読めるはずのない文字が並んでいる。

ただでさえ読めないくずし字の試験に、範囲ではないと思っていたところが出題されたのだ。自分を恨むしかない。

テストが終わった後も自分を責めずにはいられなかった。


何とか次のテストは頑張らねば。そう心に決めた。それでも不安なので、本来ならば出さないつもりであった救済レポートももちろん出そうと思う。

日本史講義のの救済レポート

ここまで「何の話だ?」と思った人もいると思う。

実はこの文章は、大学の日本史の授業で出された、「史料を所蔵している施設に行って感想レポートを提出しなさい」という課題のために、国会図書館を訪れた時の記録だ。

実際に史料を所蔵している機関に行かなければならないという少し面倒な課題ではあるが、単位のためならやむを得ない。「藁にもすがる思い」とはまさにこのようなことだろう。

そんなわけで、今日は休日を使って国会図書館にある憲政資料室へ。

憲政資料室はおもに近現代日本政治史に関する文書を保存・公開している施設で、個人の日記や書簡などの私文書が中心となっている。

国会図書館へ

今回、国会図書館に行くのは初めてで、その大きさに圧倒された。

いや、国会図書館に圧倒されたのではない。付近一帯の雰囲気に圧倒されたのだ。

東京メトロの国会議事堂前駅から出ると、一発目に目に飛び込んでくるのが首相官邸だ。小学校の遠足で来たことがあるような無いような、どちらにせよ自分にとっての首相官邸はテレビの中の世界だ。

何か事件があったのではないか、という数の警察官が警備にあたっている。毎日この数の警官がいるのか、今日は特別なのかはわからないが、こんなに一か所に警察官がいるのを見るのは、山形でお召列車を偶然見た時以来である。

道路を走る車はすべてが高級車。寝間着同然の服装ですごいところに来てしまったと思った。



目当ての国会図書館に入ると、初めての人はまずカードを作らされる。もちろん無料で作れるカードは、5分ほどで手渡された。

入り口は駅の改札口のようになっていて、作りたてのカードをかざすと反応してゲートが開いてくれる。


それにしても静かだ。図書館とはそういうものなのだが、それにしても無音である。

暫く雰囲気を楽しんだ後、4階の憲政資料室へ向かった。入り口は自動ドアかと思いきや、まさかの手動。本館入り口のハイテクから比べるとかなりの落差だ。

扉が開いてくれるのを待っていた0.1秒を返してほしい。なんだか面食らった感じだ。ドアを動かして中に入ると、今まで以上に静かだった。

とりあえず、ふらふらと眺めながら周ってみる。『伊藤博文関係文書』や『井上馨関係文書』など、なじみのある人物に関係のある史料が並んでいる。

実は今回はあらかじめ見たい史料は決まっていた。『三島通庸関係文書』である。この文書の中の福島事件に関する史料を見てみたいと思っていた。

会津大峠道路を拓いた先人を思う。

昨年夏、福島県の会津地方、喜多方に住んでいる祖母の家に泊まった時、ふと山形県の鶴岡に遊びに行こうと思い立った。

鶴岡は大学1年の夏に免許合宿で1か月間お世話になったところで、1年ぶりに車で行ってみようと思ったのだ。

福島の会津地方から山形に行くには大峠道路という道で山を越える必要がある。その大峠道路を走りながらこんなことを考えた。

「よくこんな山の真ん中に道を作れたなぁ。」



その夜、大峠道路について調べてみると、三島福島県令が指示した大峠道路をはじめとする会津三方道路建設に際し、彼に反抗した自由党員や地域農民が弾圧されたのが福島事件だということがわかった。

県令三島通庸は会津地方の人々を強制的に工事に動員したという。その人々の努力が今日の大峠道路となっている。

鹿児島出身の三島通庸が圧政を行っていたことは明らかであり、福島県会津の血が混ざっている“自称会津人”の自分としては三島に対してあまりいいイメージはないのだが、せっかくなので今回は『三島通庸関係文書』を見てみることにした。

カウンター横の棚には目録が置いてある。日本占領関係資料や日系移民関係資料など、様々な資料が並ぶ中から、『三島通庸関係文書』の目録を見つけて手に取った。

道路工事関係の項目から「好民暴挙之儀二付往復文書」という史料を閲覧することにした。

残念なことに、この目録は内容までは記載されていない。何が書いてあるのか、細かいことはわからないがとりあえず見てみる。



必要書類を書いて史料を手に取る。実物を見るとやはりどきどきする。なかなか自分では史料を見ようと思わない。

この憲政資料室のいいところは居るだけで頭がよくなった気分になれるところだ。近現代の史料を手に取っただけで研究者にでもなったかのような気分になれる。

また、運が良かったのか、三島通庸は字がものすごくきれいなのだ。あまり崩れていないので、ど素人の自分でも何とか読むことができる。憲政資料室で近現代の史料を読むことができてしまっている。

この気持ちは他の人にはわからないだろう。



 「宇多成一という人が中心になって反抗したのか。」

 「当然だが自由党員が悪いことになっているな。」

 「岩倉具視に向けて書いたのか。」

 「大木喬任って人、授業で聞いたことあるな。」

このような感じで何となくの内容はわかる。使われている表現こそ難しいが、字が読めないことはほとんどない。

この史料から新たな何かがわかったわけではないが、自分にとっては十分であった。

なにしろ明治時代に書かれたものが読めたのだ。記念に該当ページだけ複写して、国会図書館・憲政資料室初体験を終えることにした。

国会図書館を出ると目の前に国会議事堂が見えた。

日本のど真ん中に田舎者がお邪魔させてもらっていたことを数時間ぶりに思い出した。

次に来るのはいつになるかわからないがまた来ようと思う。

意外と面白かったし、自習に使えばしっかり頭がよくなりそうだ。レポート課題の達成以上にいい発見ができたと思う。

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