一年ぶりに山形県鶴岡の母校へ帰る。

免許合宿

 2016年、大学1年生の夏休みに山形県鶴岡市で車の免許を取った。今回はちょうど一年ぶりに山形へ行こうと思う。運転の仕方を一から教わった場所に自分の車で行くのはなんだかおもしろい感じがした。

今回は福島県喜多方市にある祖母の家から山形へ向かうことにする。喜多方市は福島県でもかなり山形県寄りにあるので、そこまで時間はかからないだろう。そう思いながらも念のため、朝7時には家を出た。

山形県へ入る

喜多方市内を出発してしばらく北上すると、大峠道路という山道に入る。

国道なだけあって道幅はしっかりしており、車は走りやすいが、周りはかなり険しい山道だ。よくこんなところに道を作ったものだと感心する。昔の人はすごい。

都会にいると忘れてしまうことだが、今はいろいろなものが機械によってつくられているが、昔は全てが人の手によるものだったのだ。

日中ダムを過ぎて、しばらく走るとトンネルが続く。山の中を通っているのだろう。

ひときわ長いトンネルを抜けるとそこはもう山形県だった。山形に入ってからもそれまで通り国道121号線を走り続ける。

目に入る地名は置賜だ。これで「おきたま」と読むらしい。置賜は最近読んだ本の中で出てきた地名なので印象に残った。山形県の南部を置賜地区と呼ぶらしい。

山形に入ってすぐ、右側に道の駅が見えてきた。出発してからまだそれほど時間も経っていないが、トイレ休憩にお邪魔することにした。

朝が早いので車も少く、開いていないお店も結構多い。

用を足したらすぐ「道の駅 田沢」を後にした。



また少し車を走らすと、米沢が近づいてきた。

米沢は会津からだと比較的行きやすい場所にある。大きな神社などもあり、米沢も魅力的な場所なのだが、今回は米沢の市街には行かずに手前で左折した。

最上川とつり橋

しばらく米坂線に並行して走ると、最上川が見えてくる。

最上川は規模も大きく松尾芭蕉の俳句でも有名な川だ。「五月雨を集めて早し」を思い出しながら北上するとしばらくしてまた山道に入る。

白鷹町を過ぎ、右側に山、左側に最上川という道を走り続けると川の方につり橋のようなものが見えた。

珍しく思い、さっそく車を停めて橋の袂まで歩いて行ってみる。

見るとそれは木製のつり橋だった。入り口は立ち入り禁止になっていて渡ることはできなかった。立ち入り禁止がなくても渡らなかったかもしれない。

左右の柵はかなり低く、木も劣化しているように見える。季節が夏だということもあり、草も多い茂っていて、人が一人通れるくらいの幅しかなかった。

橋がくずれる怖さと、向こうが異世界だという怖さがあるね。
川は「境界線」だからうかつにわたらない方が良いよ。

月山を横目に庄内平野へ

つり橋の写真だけ撮って出発すると、またしばらくは川沿いの道を走る。

途中で何度か最上川と交わりながら北上すると寒河江に到着した。かなり大きな町だと感じる。

寒河江からは、日本海沿いの鶴岡市に向かって、ひたすら西に向かう。この道がまた、長い間山しか見えない退屈な道だ。

行政区画上はもう鶴岡市に入っているらしい。しかし、自分の知っている鶴岡はもっとにぎやかな場所だ。

やはり東北は一県が広いのと同じように一市町村も広いのだろう。



途中、出羽三山の一つである月山のわきを通る。

地図では近いことはわかるのだが、前景の山が近すぎて肝心の月山が拝めない。次に機会があれば、月山を目的地にドライブしたいと思う。

もどかしい思いをしながら北西を目指して進み続けると、だんだんと景色がひらけてくる。

やっと自分の知っている鶴岡の景色に近づいてきた。

道のわきには枝豆畑が並ぶ。いや、枝豆ではない。だだちゃ豆だ。

山形、庄内地方ではだだちゃ豆という品種の大豆で枝豆を作るらしい。

素人の自分には普通の枝豆との違いは分からないが、おいしいことには違いない。田んぼよりもだだちゃ豆畑の方が多いというところもあった。

もちろん、庄内平野は全国有数の米どころなので、田んぼもたくさんある。

昨年の免許合宿の時には毎日ブランド米の「つや姫」を食べさせてもらったことは記憶に新しい。

この米は素人でも味の違いが判るほどの旨さだった。教習の20日間でかなり体重が増えたのも「つや姫」のせいだということにしている。




田畑の景色はだんだんと市街地へ変わっていく。

鶴岡市街地は山形の中でも大きな町だろう。さすがににぎわっている。人、車の数も多い。ようやく到着したとほっとした。

ふと時計を見ると、出発から二時間半以上が経っていた。随分と長いこと運転したようだ。

懐かしの鶴岡

昨年お世話になったのはJR鶴岡駅に近い、鶴岡自動車学園という教習所だ。

その近くには三宝荒神社という神社がある。そこの鳥居がかなり大きく、遠くからでも見えるランドマークのようになっている。

車のフロントガラスに大きなオレンジ色の鳥居が見えてくるといよいよ帰ってきたという感じがする。

自然と「帰ってきた」という表現を使ってしまったが、鶴岡で過ごした二十日間は本当に楽しく、今では、実家の神奈川、大好きな福島に次いで第三の故郷とも呼べる場所になっている。

もうそこは路上教習で使った道で、ナビを使わなくてもわかる道だった。

ちょうどおなかも空いていたので、合宿期間中に毎日昼を食べていた食堂で、一番のお気に入りだったチャーハンを食べる。

なにが特別というわけではないがとにかくおいしい。一緒についてくるわかめスープまできれいに飲み干して、少し余韻に浸った後お店を出た。

普通のチャーハンだが、教習所横の食堂のチャーハンがおいしすぎる

ちょうど昼前の教習が終わる時間だったようで、懐かしいチャイムが聞こえてきた。

合宿生と思われる学生が大勢で賑やかに食堂へ入っていくのを羨ましく思いながら、車を発進させた。

湯野浜で一年ぶりの日本海を見る

懐かしの宿舎へ

鶴岡市街から海の見えるところまで行くには、山を越えなければいけない。一緒に合宿に入った友達と自転車で山を越えたことを思い出す。

もうずいぶん古くなった軽自動車で山を登り、一気に下るときれいな海が見えてきた。日本海を見るのは一年ぶりだ。

まっすぐ砂浜に行きたいところだが、その前に行きたいところがある。まずは二十日間お世話になった宿に行かなければならない。

毎日時間になればおいしいご飯が用意されていて、温泉にも入れる。夜になれば教習所で仲良くなった友達と卓球をして、眠くなったら寝るだけ。最高な生活だった。

町の真ん中の足湯

宿の写真を撮った後は、毎晩散歩がてらに行っていた足湯に向かう。イオンでヒッチハイクを断られた女性に足湯で偶然再会したときは本当に驚いた。街の真ん中にある足湯にさえも思い出は詰まっている。今回はさすがに足湯には入らなかったが、しばらくあたりを散歩してから再び車に戻る。




ようやく海、湯野浜海岸に向かう。砂浜に車を乗り入れると一瞬タイヤが空転して砂から抜けられなくなってしまった。焦ってアクセルを踏み込むと何とか抜け出すことができた。

車を止めて、海の方へ降りてみる。サンダルの中に砂が入るのが不快だが、気にせずに波打ち際に進んでみる。

やはり東北の日本海は冷たい。この日は天気が良かったので絶景だった。ここでも何枚か写真を撮って車に戻った。

懐かしさ

免許合宿は楽しかった。そして、一年ぶりに同じ場所に戻ると懐かしさに胸が躍る。しかし、その興奮は長くは続かない。どんなに楽しいことでも誰かと共有しないと、何か虚しい感じがする。友達と一緒にいるからこその楽しい日々だったのだ。

そう思うと、これ以上鶴岡にいることもない。


道の駅でお土産のだだちゃ豆を買い、思っていたよりもずいぶん早く、再び福島に向かって車を走らせた。

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