【日本海・温泉】山形県鶴岡市湯野浜の温泉・足湯がエモすぎる

東北紀行文

別の記事にも書いているが、僕は大学1年の夏、山形県鶴岡市で車の免許を取った。



その時、教習所は鶴岡市街だったのだが、宿泊したのは日本海の目の前の湯野浜という温泉街だった。


合宿先で仲良くなった友達と花火をしたのも湯野浜、コンビニに買い物に行ったのも湯野浜、地元の女の子と仲良くなったのも湯野浜。どちらかというと、免許合宿の思い出は鶴岡市街よりも湯野浜にある気がする。



今回、2019年3月末に日本海側の東北を旅しているのだが、そこで再び湯野浜に立ち寄った。その時に思い出の足湯に浸かったのだが、やはり最高だったので今回この記事を書くことにしたのだ。

鶴岡の温泉街、湯野浜

まず、湯野浜の足湯について紹介しておく必要があるだろう。

湯野浜とは山形県鶴岡市の中の地名の一つで、名前の通り、町には温泉が湧いている。足湯はそんな温泉街の、坂を下った下の方にある。



日本海の砂浜からは徒歩3分ほどで、海も近くロケーションも抜群だ。夕方には日の入りも見ることができ、その夕陽は日本でも100選に入るらしい。



塩化ナトリウムを含んだ源泉が湧き出ている足湯では、いつ行っても誰かしら脚を入れて楽しそうに話をしている。


僕は合宿免許の期間中、毎日宿から歩いて5分ほどの足湯に入るのを日課にしていた。

そこで一緒に来た友達とダラダラ話すのが一日の楽しみだった。上に書いた地元の子と仲良くなったというのもその足湯での出来事だ。



これでその足湯の良さが伝わったかわからないが、僕にとってはとてもいい思い出の一つなのだ。
また、地元の人にとっても憩いの場であるようだ。




日本海側から、山形・秋田と車で北上していく。その道中、懐かしの湯野浜に立ち寄ることにした、そして、久しぶりにその足湯に入ることにしたのだ。

小雨が降る中ズボンの裾をまくってお湯に足を入れる。湯野浜の温泉はかなり熱めだ。だが、初めこそすごく熱く感じるがすぐになれる。

顔にあたる風は真冬のように冷たい。上半身は一気に冷める。そこに雨も追い打ちをかけてくる。

後ろからは日本海の荒々しい波音が聞こえてくる。振り返ってみても、想像通り白波が立っている。

その中でふくらはぎから下だけは天国のように心地が良い。






しばらくすると地元のカップルらしき人達も入ってきた。

慣れっこなのか、こちらを気にすることもなく足湯に入る。その他愛のない会話がまた心地よい。




ここの足湯に入っているとあっという間に時間が経ってしまう。

しばらくして、雨が強くなってくるとカップルは車に戻っていった。

僕もかなり濡れていたのだが、なぜか動けない。どうやらもう少し足湯にいたいようだ。


静かな中に耳をすませば聞こえてくる波音。吹き付ける海風と冷たい晩冬の雨。すべてが相まって、最高にエモい空間を作り上げていた。

自然と会話が生まれる場所

それでもさすがに我慢できないくらい雨が降ってきたので、一度車に戻った。今回の旅は車中泊の旅なので、どこかで風呂に入らなければいけない。

どうせならと思い、湯野浜の大衆浴場にお邪魔することにした。僕の地元では銭湯すらも消えかかっているが、湯野浜ではいまだにほぼ毎日通う人がいるようだ。

アウェーだと思いながらも近くの無料駐車場に車を停め、大衆浴場へと向かう。受付には感じの良い中年の女性が立っていた。

300円で入浴券を買ってその人に渡す。

すると、シャンプーとボディソープの案内をされた。温泉には無料でついているものだと思い込んでいた僕は、今回洗顔フォームしか用意していなかったので困った。

シャンプーとボディソープで合わせて400円もするらしい。購入してもよかったのだが、一回しか使わないのにボトルで買わされることも気になった。


券売機の前で躊躇していると、その女性が、「返してくれるなら…」と二つのボトルを差し出してくれた。

僕にはその受付の女性が仏に見えた。おそらく受付の仕事が終わったらその人も温泉に入るつもりだったのだろう。私物のシャンプー・ボディソープを貸してくれたのだ。

優しいその人のおかげで僕は無料で頭と体を洗うことができた。

青い暖簾をくぐって、中に入ると既に6人程お客がいた。ほとんどが地元の方のようだが、3人はどうやら観光客のようだった。


恵んでもらったシャンプーで頭を洗い、ボディソープで全身を洗ったらいよいよ湯船に入る。


覚悟はしていたが、ものすごく熱い。我慢していると熱いというよりも「ひりひりする」に変わってくる。懐かしい。一昨年の夏には毎日のように入っていたお湯だ。


しばらく浴槽で湯野浜のお湯を堪能していると、地元の人に声をかけられた。その人はほとんど毎日来ているそうで、慣れれば熱く感じないという。


たしかに、僕と観光客らしき3人組だけ肌が真っ赤になっていた。どうやら常連さんは本物で、やせ我慢と言うわけではなさそうだ。

縁に座って休憩したり、再び温泉に入ったりしていると今度は観光客らしき三人組の一番年長の人に話しかけられた。

話してみてわかったが、その人は観光ではなく仕事の出張で来てるらしい。

今日はたまたま仕事が休みで、みんなで宿の外の温泉に来たということだった。雰囲気と話から考えるに、おそらくガテン系の仕事だろう。


さらに話してみると、普段の仕事場と僕の地元がかなり近いということもわかった。地元トークに花が咲いて、ついつい長風呂になってしまった。



最後まで仲良くしてくださったその三人組と別れて、借りた石鹸類を受付に返す。出張で来ていたその三人のうち一人は社長らしい。

そして一人は高卒で働いている同い年だということがわかった。自分は大学生という立場を利用して親の車で気楽に東北中を駆け回っているというのに、「もう社会人3年目を終える同い年がいるのか…」と、なんだか複雑な気持ちになった。



大衆浴場は自然と会話が生まれ、勝手にコミュニティができる。その場で仲良くなり、風呂から上がると他人に戻る。面白い場所だ。


そんな場所はドラマの中だけだと思っていたが、日本にはまだそんな場所が残っているのだ。

僕らのような若い世代は、そういう場所をなくしてはいけないと思う。次の元号は何になるかわからないが、時代は新しくなっても大切なものは残していきたい。

外の人から見て「エモい」ものは、それを当たり前に毎日繰り返している人がいるから成り立つものなのだ。

身体を拭きながら、そんなことを考えた。



おそらくこの場所はまだまだ残るのではないかと思う。
近いうちに必ずまた来よう。 今度はちゃんと、シャンプーもボディソープも持って。


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