長野の中心都市、松本へ
諏訪大社から長野の松本までは、片側一車線だが道幅の広い国道が続く。
今回一緒に旅をした友人はこの時免許を取って5日だったが、この走りやすい道で運転手を交代することにした。
左折で国道へ出て、一本道ならそう怖くはないだろう。
僕はしばらく助手席で初心者の運転を見ながら、長野の町なみを眺めていた。
諏訪大社を出発して間もなく、右側に大きな湖が見えてきた。諏訪湖である。
諏訪湖の左側を通る道は車の数も多く、人の多い地域なのだろう。
一般的にはどうかわからないが、僕にとって諏訪湖=「君の名は。」なのだ。
ヒロインの三葉が住んでいる糸守の湖は諏訪湖がモデルになっているらしい。
僕はてっきり磐梯山と猪苗代湖だとばかり思っていたが、考えてみれば飛騨高山なども出てくるので、「君の名は。」の世界は東海地方なのだろう。
映画に出てきそうな湖を過ぎると、久しぶりの山道に入る。
初心者の安全運転で山を越えると、長野県塩尻市だ。道路標識にはもう松本の文字も見える。
松本に着いたのは夕方16:00ころだったか。
さすが、栄えているのがわかる。
今回の目的地は金沢なので、松本は目的地ではないが、なにか達成感がある。
新宿を出発するJR東日本の特急「あずさ」もこの松本を終点にしている。なんとなく、松本はゴールという感じがするのもそのせいか。松本では一息つきたくなった。
松本城のすぐ裏の駐車場に車を停め、城に向かう前に神社にお参りした。この旅行でいくつの神社の神社を訪れただろうか。
道を渡って、松本城のある公園に入る。公園内に観光客は思ったよりも少なく、のんびりした雰囲気だった。
お土産物屋の中は混雑していたので、観光客は帰る時間だったのかもしれない。
大きなお堀に沿って歩いてお城の正面にまわる。せっかくなので城の中に入ることにした僕たちは、入場券を買って城の中を見学した。
昔の作りのままなので、天井が低く階段もかなり急で、気を抜くとケガをしそうだった。
内部には瓦や刀などの歴史的な資料の展示があって、それを見ながら回るのも面白かった。
最上階は窓が全開になっていて、松本市内が東西南北見渡せるようになっている。
室内を通過する風が体にあたって寒かったが、景色は素晴らしかった。
遠くに見える山もはっきりと見え、この後に行く予定の開智学校も見えた。
外ばかりに気を取られていると気が付かないが、最上階の天井には神様がいた。行く機会のある人は外の絶景だけでなく、天井にも目をやってほしい。
松本城を出た後は開智学校へと向かう。少し歩くと、明治初期の擬洋風建築が見えてくる。
開智学校は戦前の小学校だ。松本城と同じく、学校の中には資料展示があって、それ見て回るだけでも面白かった。
いろいろなことを知ることができたが、全体的に昔の小学校は今の小学校に比べても驚くほど厳しかったようだ。
信州松本の開智学校はかなり進んだ学校だったのだろうか。
今となっては建物しか残っていないが、教育への情熱は展示物から感じられた。
「学都松本」という文字を見たが、学業・学問に対して町全体が高い意識を持っているように感じられた。
ふたたびのロングドライブで富山へ向かう
松本を出発したときにはすでに日が傾きかけていた。
運転手は再び自分に交代し、今まで北に向かっていた車を今度は西に向かって走らせる。
今夜も車中泊の予定だが、風呂に入らないのはきつい。今日のゴールは富山の温泉ランドに設定して、まずは長野から岐阜県に向かう。
しばらく続く田んぼ道を抜けて山道に入ると、車内に太陽光は入らなくなった。暗い山道だが、左側の山肌には残雪があるのがわかる。
スタッドレスタイヤを履いてはいるが、雪があったらと思うと少し怖い。
長い間急な山道が続く。自分以外の人に伝わるかわからないが、松本から富山までの道は福島県奥会津から栃木日光方面に抜ける国道121号の景色に似ていた。
右側は延々と山肌で左側は谷になっている。時折スノーシェッドの下をくぐるその風景は、会津から関東に帰る少し寂しい車内を思い出させた。
梓川という川に沿って山道を走る。
1時間ほど運転したころだろうか。道のわきに残る雪の量も多くなってきた。
中の湯という土地に来たところで、予期せぬことがおこった。節約のために有料道路を迂回する設定にしていたGoogleMapがさしている道が通行止めなのだ。
峠道なので雪の多い冬期は封鎖されているのだろう。
仕方なく、急遽財布に入れていたETCカードをセットして、有料道路のICへと進む。
長いトンネルを抜けると、有料道路の出口は思いのほかすぐだった。
平湯温泉付近の料金所で有料道路を抜けると、またすぐに山道になる。
そこは今までの山道とは違い、道のわきには温泉旅館が並んでいた。少し高級そうな旅館の明かりで道が照らされている。
奥飛騨と呼ばれる温泉街を抜けて、道の駅が見えてきた。
「道の駅奥飛騨温泉郷上宝」という道の駅で一休みする。
アットホームな焼き肉屋で飛騨牛を食す
それにしても今回の旅は本当に行き当たりばったりな旅だった。
食事をどこでとるか、どこで寝るかも決まっていない。それどころか食べるのか、寝るのかも動きながら考えるという旅だった。
そんな適当な旅行だったが、道の駅を出たあたりでさすがにおなかが減ってきた。
富山に入る前に何か食べようということになった。
スマホで店を探すと色々出てきたが、飛騨市の焼き肉屋で1日目の夕飯を食べることにした。
別の記事にも書いているが、料理はもちろんおいしかったが、店の雰囲気が良かった。
たまたま居合わせた客がとても楽しそうに話しているのを聞いて、こちらも幸せな気分になった。
焼肉とホルモン鍋を食べ、締めにきしめんを食べて、焼き肉屋「たからや」を後にする。
焼肉屋で火の目の前に顔を置いていると眠くなってしまう。
ここでまた、友人に運転を代わってもらい、僕は助手席へと移動した。
富山の温泉
飛騨から富山まではまた山を越えなければいけない。
しばらくハンドルを両手でがっちり握って運転する友人の横で景色を眺めることができた。山の中の道は多くが谷に沿って通っている。
富山の市街地に入った時にはもう21:00頃になっていた。目的地は富山の海王という温泉パークだ。
大通りから少し暗く細い道に入ると、暗闇の中で異様に明るい建物が見えてくる。
どうやらそこが海王という施設らしい。海王は宿泊こそできないがマッサージなどのサービス付きで、入浴する以外にもくつろげる空間だった。
着替えをもって、脱衣所に行くと人がたくさんいた。中には大きな浴槽があり、外には露天風呂もある。
もちろんすべて温泉でお湯や水を足したりすることもしていないらしい。
また、サウナもついていて、つい調子に乗って水風呂とサウナを二往復してしまった。
いつも自宅で湯船には浸かっているが、足を完全に延ばして入れる風呂に入るのはやはり気持ちがいい。
いつもより長めの風呂から上がり、畳の空間で柔軟体操をする。
このあたりから体に少し異変を感じた。
温泉にしっかり入ったのにもかかわらず、なんだか寒いのだ。脱水症状を疑って、海王の中に備え付けられていたスポーツドリンクで水分補給をした。
それでも体の震えは止まらない。気のせいだと自分に言い聞かせつつ、車に戻り、暖房をかけるといつのまにか寒くはなくなった。
思えばこのあたりから悪夢は始まっていたのだろう。
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