初めて自分の運転で福島へ。

東北紀行文

2018.3.16

大学二年から三年になる春休み、祖母のいる福島県喜多方市へ行った。今回は母と妹との二泊三日。喜多方へはもう何度も行っているが、今回は初めて自分の運転で行くので、何か特別な感じがする。

初めて母を乗せて

16日金曜の夜に三人がそろうとコンパクトカーに荷物を積み込んで出発した。まだ小学生だったころ、家族で福島に行くときには湾岸線を使っていたが、今回は圏央道を使って久喜白岡まで行くルートを使うことになった。数年前に圏央道が完成してから神奈川県央から北関東に出るのがとても楽になった。相模原愛川ICから圏央道に乗ると久喜白岡までは渋滞もなくあっという間だった。東北自動車道は宇都宮までは三車線なので、とても走りやすい。夜なので眠くならないかと心配だったが、家族での会話も弾み楽しく運転することができた。

何年か前までは福島に行くとき、いつも両親の運転で車に乗せてもらっていた。好きな音楽をかけ、話したいことを話し、眠くなったら寝るという楽な旅であった。それが今度は自分が運転して助手席に母が乗っているというのは何とも不思議な気分だ。免許を取って二年も経過していない私の運転は母からしたら怖いようで、スピードの出し過ぎや安全確認を何度も指摘された。たしかに私がスピードを出し過ぎたり危なっかしい運転をしていたのかもしれないが、どれだけ安全に運転していてもおそらく何かしらの注意はされた気がする。親とはそういうものなのだろう。

暗い東北自動車道で考えたこと

夜の東北道はとても暗い。福島県に入るあたりから高速道路の周りはひたすら山だ。そのため、あたりにある光は自分の車や周りの車のライトと一定間隔の道路照明だけ。これは高速バスで昼間に通るときには気づかないことだった。小さい頃、親の運転で夜の東北自動車道を通ったことは何度もある。その時は当然道が暗いなんてことは考えない。ただ、少しずつ福島に近づいていることにわくわくするだけだった。

自分で車を運転していると、道路のこと以外にもいろいろなことに気付く。色々なことに気付くのは自分が大人になっているからというのもあるかもしれない。ふと、いつの間にか年を取って大人になっていると思う。自分が車を運転して、親を乗せているという事実が、余計にそれを意識させた。ただ、大人になって色々なことが変わった今も、福島に近づく時の期待感はあの頃と何も変わらない。

私が福島を好きなのはおそらく福島という土地をノスタルジーの対象にしているからだ。「あの頃はよかった」という懐かしさを福島に求めているのだろう。今は今で充実していて楽しい。ただ、毎年夏休みに家族で福島に行っていた小学生の頃は、不安や心配事は何もなく、とにかく毎日が楽しかった。もちろん何もかも昔の方が良かったわけではない。それでもふとした時に自分の理想を小学生時代に求めてしまうことがある。特に一番楽しかった福島、泉崎で過ごした日々を時々思い出す。福島は自分の中のいちばん楽しいことの象徴になっている。

見慣れた風景、白河を通過する

圏央道、東北道を通って栃木・福島県境付近まで来たのはよかったが、そこからどの道のりで喜多方まで行くかはまだ決まっていなかった。郡山まで行って磐越道でもよかったのだが、なんとなく高速道路ばかりではつまらないだろうという話になり、白河で高速道路をおりることにした。東北自動車道の白河付近にはふたつの出口がある。ひとつは新白河駅付近の国道4号線につながる白河ICだ。もう一つは、ETC専用の白河中央スマートインターチェンジである。

走行車線に寄って、ウインカーを出し、本線からずれると通常の料金所と同じように徐行しながら道なりにすすむ。間もなく暗闇の中に料金所が見えてくる。ETCが反応して小さなバーが開くと国道294号線に出る。目の前には田舎特有のだだっ広い駐車場を持つ大きなセブンイレブンがある。ここまで休憩なしで来ていたので少し休憩をとることにした。三月下旬の福島県、その寒さを忘れていた。車を降りた瞬間、車内気温との違いに驚愕した。高速道路の電光掲示で「-4℃」という表示があったのを思い出した。とにかく寒い。足早に店内に入って軽食を買うと足早に車へ戻った。

勢至堂を通り、会津盆地へ入る

白河を出発して国道294号線を北に少し走ると間もなく天栄村に入る。天栄村には「季の里天栄」という道の駅がある。まだ祖母が泉崎にいる頃、お盆になると家族やいとこのみんなでこの道を通って喜多方へ行っていた。その時にここへ立ち寄ったのを思い出した。田舎の直売所なので野菜などが神奈川では考えられないほど安く、家族で爆買いした記憶がある。個人的にはじゃがいもにみそ味を付けたものがとてもおいしかったのが印象に残っている。小さめのジャガイモがみそ特有の黄金色にテカっていて、一見堅そうだが中はホクホクでとても食べやすい。あの味は忘れられない。調べてみると「道の駅 季の郷天栄」は旬の野菜を並べているということなので、時期を考えずにいきなり行っても同じものは食べられないかもしれないが、ぜひまた食べてみたい思う。おそらくお盆の前後に行けばまた食べられるのではないかと思う。

天栄村を過ぎたあたりでもうすでに22:00をまわっていた。国道294号線は東北自動車道の比べ物にならないほどに暗い。おそらくは左右が田んぼであろう、何もない道を数十分走り続けるといきなり山道に入る。この山道は昼間に通ると道のわきに小川や滝が見えてすごく気持ちのいい場所なのだが、夜ではもちろん何も見えない。道のわきには大量の雪が残っていた。除雪車が道路わきによけた雪が高いところでは3m近く積まれている。雪を見たのは随分久しぶりであった。福島県の中でも中通りと山間部では積もった雪の量にこれだけ違いがあるのだ。

勢至堂というのは地図でいう須賀川市と郡山市の境のあたりのことで、地元の人はこの道を通って会津から中通りに抜けることを勢至堂を通るという。字の表記からわかる通りお堂のようなものがあったのか、その名前の由来はわからないが道の歴史としては16世紀頃までさかのぼることができるという。時間が許せばこの辺りの歴史についても調べてみたいと思う。

山を越えるともうじき会津に入る。地図で見ると猪苗代湖の南側を通っているはずだが、車から湖面が見えるほどは近くない。猪苗代湖の景色を楽しみたいなら湖の北側を通った方が、景色を楽しめる。いつもならこのあたりで車の左側に磐梯山が見えるのだが、暗いのでうっすらとしかわからない。

最後に夜の喜多方でご褒美を見た

会津磐梯山を過ぎると会津藩校日新館の看板の前を通り、一気に坂を下って若松の町へ入っていく。景色が一気に変わって車通りもいくらか多くなるが、やはり時間も時間なので明かりも少ない。若松からは塩川・喜多方方面へひたすら北上していく。途中磐越西線と並走する道がある。電車で来ても車で来てもこの道は必ず通ることになる。

いよいよ喜多方につくという時にはもう自分以外の二人は寝てしまっていた。祖母家に着く直前、古い印象を残した町なみに街灯が光る、とても綺麗な通りを見た。街灯の色がガス灯のような温かい色で、関東の人気観光地である川越・小江戸に負けないような「映える」町なみだった。もちろん通行人はいなかったのでその景色は余計に綺麗で、長い運転の最後にご褒美をもらった気分になった。

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